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大阪市北区堂山町傷害被害事件及び茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件控訴審判決宣告公判

石橋学神奈川新聞川崎総局編集委員の招きで隣に座った辛淑玉さん

 12月19日、茅ケ崎市民文化会館で伊藤大介被告人と北嶋直樹被告人が渡辺賢一さんに暴行したとする茅ケ崎市民文化会館暴行被疑事件と、大阪市北区堂山町で伊藤大介被告人が荒巻靖彦さんに傷害したとする大阪市北区堂山町傷害被疑事件の判決宣告公判が東京地方裁判所で行われました。
 東京高等裁判所前には、久しぶりに午前中に行われる公判の傍聴券を求めて、被害者の渡辺賢一さん、特定非営利活動法人外国人犯罪追放運動代表者の有門大輔さん、フリーライターの李信恵さん、神奈川新聞川崎総局編集委員の石橋学さんなどが集まっていました。
 抽選券の抽選が終わり、当選した者だけが入ることができる東京高等裁判所第429号法廷前には、裁判所の構成をメモするというジャーナリストらしい仕事をこの公判の取材で久しぶりに行う石橋学さんの姿がありましたが、この日の左陪席の江見健一裁判官が京都朝鮮第一初級学校街宣名誉毀損裁判が審理されている時期に京都地方裁判所判事であったことをすぐに察知するほどの鋭さはおそらくなかったことでしょう。
 裁判所職員の指示により傍聴券を持つ傍聴希望者は第429号法廷前から奥の待合室の中へと並んでいましたが、一人傍聴希望者がこの列に並んでおらず、後から金属チェックを経て最後に第429号法廷の傍聴席に入ってきた方がいらっしゃいました。それは辛淑玉さんでした。辛淑玉さんが入廷した時には傍聴席は完全に埋まっており、最前列の傍聴席に座る石橋学さんに招かれてその隣に辛淑玉さんは座ることになりました。

判決宣告

裁判所の構成

裁判長裁判官 伊藤雅人
右陪席裁判官 島戸 純
左陪席裁判官 江見健一
裁判所書記官 榮井 真

被告人側法廷入廷順序

神原元弁護士
北嶋直樹被告人
伊藤大介被告人
上瀧浩子弁護士
永田亮弁護士

伊藤雅人裁判長
「判決を宣告します。
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
原審において、被告人の罪とされたとする事実は次のとおりである。
①  被告人らが共謀して茅ヶ崎市民文化会館において、渡辺を階段から転落させ、この行為を暴行罪の構成要件を満たすものとしたもの
② 伊藤被告人の荒巻に対する傷害で、大川の生命の危機であるとして荒巻を複数回殴打し、顔面を踏みつけたとするもの。これは荒巻に、全治2週間の負傷を負わせたものである。そして、この行為が荒巻が動かなくなった後も執拗に行っていることで過剰防衛であるとして傷害罪の構成要件を満たすとしたもの」

そして、伊藤雅人裁判長が「全治2週間」と読み上げたときに辛淑玉さんが「2週間・・・」とため息のように述べた独り言が近くの傍聴人の耳に聞こえるように響きました。

裁判長
「弁護人の主張は①、②のいずれについても事実誤認とするものである。
 ①については、暴行の事実が無いとし、渡辺が建物内に入ることで映画上映が中止されるおそれがあり、差し迫った危険がある正当行為であり、正当行為でなかったとしても誤想防衛であって無実であるとするものである。
 これについては、伊藤と北嶋が意思を通じて渡辺の背後から腕を掴み、身体を手で押したものであり、警備の必要範囲を超えたものである。また、渡辺の行為によって急迫不正の侵害があったとは認められず、伊藤と北嶋に故意があったことが認められる。したがって、原判決に不合理な点はなく当裁判所もそれを支持するものである。
 ②については、弁護人は、伊藤の行為について正当防衛の範囲内に留まり、仮にその範囲内に留まらなかったとしても伊藤の誤信による誤想防衛であり過剰防衛ではないとし、原判決の事実誤認を主張するものであるが、防犯カメラの映像などを観ても伊藤の暴行は質、量のいずれにおいても過剰であり、誤信があったことも認められず、故意があると認められる。また、荒巻のナイフを手から離させる意図で暴行となしたものであったとしても、荒巻が動かなくなり急迫不正の侵害がないことがわかっていた時点においても伊藤は暴行を続けており、暴行が質・量ともに過剰であることが認められる。したがって、原判決に不合理な点はなく当裁判所もそれを支持するものである。」

 そして裁判長は、「この判決に不服がある場合には、14日以内に当裁判所を経て最高裁判所に上告することができます。」と述べて閉廷を宣言しました。

弁護士会館5階で行われた被告人らの裁判報告会

 被告人らの裁判報告会が公判後に行われていることは、被告人の支援者のFacebookなどで明らかになっていましたが、今回の裁判報告会は宇都宮健児弁護士によって予約された弁護士会館5階の東京弁護士会の会議室で行われていることがわかりました。考えてみれば、神原元弁護士、永田亮弁護士は神奈川県弁護士会所属、上瀧浩子弁護士は京都弁護士会所属で彼らだけの申請では東京弁護士会の会議室を予約することは困難ですから、本日公判の傍聴に訪れていた辛淑玉さんなどのつてによってのりこえねっと共同代表で東京弁護士会所属の宇都宮健児弁護士に頼むというのは非常に自然に感じます。のりこえねっとが茅ヶ崎市民文化会館暴行被疑事件と大阪市北区堂山町傷害被疑事件でしっかりと被告人側の立場に立ったことを確認することができたのは大きな収穫でした。